アポロチョコ


次の日は、2月14日、バレンタイン。


校内は俄かに色めき立っていた。

昇降口には、待ち伏せの女子が沢山いたし。

始業前の教室も、チョコを渡す女子で賑わっていた。


「あの……、山上先輩いますか?」


一年の制服を着た女子が、何人かかたまってやって来た。

「山上ぃ~」

そう呼ばれて、少し不機嫌に、それでも教室入口まで歩いて行く山上の背中に自然と視線が吸い寄せられる。

奴は二言三言彼女らと言葉を交わすと、そのまま廊下へ出て、ドアをピシャリと閉めた。


気にならないと言えば嘘になる。

自分が何もしないのを棚に上げ、何が起こっているのか知りたくてウズウズしていた。


単なるファンがチョコを渡しただけか?

それとも告白がらみか?

そして、山上がそれを受け取ったのか否か?


「咲、顔が怖い」


霧子が寄ってきて、あたしの眉間の皺を撫でた。


「そんなに気になるなら見てきたら?」

「馬鹿言え、そんな恥ずかしいことできるかよっ!」


目を閉じてそのまま机に突っ伏した。
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