アポロチョコ


放課後のグランドにも、いつもとは違う華やかな光景が広がっていた。


何処からこんなに湧いて出たのか? とか。

お前らいったい何をみてるのか? とか。

騒がしく山上の一挙一動に歓声を上げる、手にバレンタインのチョコを携えた女子の群れ。


「佐藤、お前ちょっとあいつら追い払ってこい!

煩くて練習の邪魔だ!」

不機嫌に一年に命令する山上に、少しだけホッとする自分を情けなく思った。

陰でウジウジしてるこんなあたしより、あいつらの方がよっぽど潔いじゃないか!


「先輩! 駄目です!

兎に角受け取って貰えないことには帰れないって。

俺じゃ話になりませんよ、先輩行ってください!」

女子の群れに軽くあしらわれ、逃げ帰ってきた一年佐藤。


「しかたねぇなぁ~、じゃ暫く休憩だ」


タオルを首から下げ、女子の群れに向かって歩いていく山上の後ろ姿を複雑な気持ちで見送った。
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