アポロチョコ
「アポロチョコってさ、お袋が子供の頃からあるんだってさ」
知ってた? と言いながら奴はあたしの横に腰を下ろした。
「1969年、アポロ11号の月面着陸を記念してその地球帰還船をイメージして作られたのがこのアポロチョコだ」
「詳しいな」
「俺の親父は船乗りだけど、夢は宇宙飛行士だったんだとさ。
だから我が家では、このアポロチョコが特別な意味を持ってる。
毎年のバレンタイン、お袋の子供達へのプレゼントはこのアポロチョコ。
夢は大きく描けってことらしい」
「へぇ~」
自然にこぼれた感嘆の言葉。
と同時に、いつにも増して饒舌な山上の様子に戸惑っていた。