アポロチョコ
「俺にも一個よこせ」
突如差し出された右手を凝視した。
「だ、駄目だよ、最後の一個だし」
手の平に残った、一粒のアポロチョコ。
あたしだって、今日チョコを渡す意味をわかってる。
こんな中途半端の状況で。
こんなちっぽけなアポロチコ一粒で。
あたしの気持ちに代えるなんて……
「俺は咲のチョコが欲しかった。
お前が何考えてるのかわかんねぇけど、これだけは言っておく。
俺は、若宮咲が好きだ」
山上はそう言うと、あたしの手に乗った一粒のアポロチョコを腕ごと持ち上げて口に入れたのだ。
それは自然と手の平にキスされる形になった。