溺心(デキゴコロ)【TABOO】
 最初は、仕事帰りにマラソンをするところから始まった。
 新は、陸上部出身で、社会人になってからも定期的にマラソン大会に参加していた。……ほんの最近まで、そんなこと知らなかったけれども。

『私もダイエットがてら、マラソンでもしようかなー』
 その前日、年上の彼氏に鼻先で笑い飛ばされたことを、懲りずに会社でも呟いてみた。
 瞬間、それまで、つまらなそうに書類をめくっていた柳原くんの顔がぱぁっと輝いた。
『本当ですか?
 先輩、別にダイエットしないといけないほど太ってるようには見えませんけど、でも、マラソンするなら付き合いますよ?』

 最初は本当に並んで走っていただけだったのに。彼氏と喧嘩したことをちょっと愚痴ったことがきっかけで、いつの間にか私たちはこんな淫らな関係になってしまった。
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