“またね。”
みんなの声が飛び交う。
呂律が回っていなくて、うまく聞き取れない。
みんな目がおかしい。
焦点が合ってない。
目の前に広がるのは『異常』としか言い様のない光景だった。
吐き気さえもするほどの。
シンナーの匂いが鼻につく。
みんなの声が勘に触る。
「何やってんの!?」
急いで立ち上がり、植木くんの手から缶を取り上げる。
植木くんも駿くんも、こんなことしてるの?
大ちゃんと植木くんだけは正気らしく、呆然と菜摘を見る。
「ねぇ、何やってんの?美香にも吸わせたの?」
声も、手も震える。
目の前に広がる光景を
夢だと思えたなら─
「はあ?言い出したのはこいつだよ」
植木くんが親指で美香を指す。
…美香が、言い出したの?
─『あたしはやってないよ』─
嘘だ。
嘘だ─
「…植木くんも吸ってんの?」
植木くんは菜摘をきつく睨んだ。
「うっせぇな。文句あんの?」
元々鋭い目がさらに鋭くなり、威圧感を増す。
でもそんなの平気。
怯むわけにはいかない。
「あるよ!バカじゃないの!?」
「マジうぜぇ!ただの遊びだろ!こいつ呼んだの誰だよ!」
─ただの遊びなんて、絶対にダメだよ。
そんなの単なる言い訳でしょう?
植木くんは本当にイライラしている様子で、荒々しく煙草に火をつけるとライターを投げた。
菜摘の足元に、壁に当たったライターが力なく転がる。