“またね。”
「…ねぇ、大ちゃんもなんかちょうだいよ」
【はあ?何がいいの?】
とっさに言ったから、ほしい『物』は思い浮かばないけど
菜摘がほしいのは、大ちゃんの気持ちだけ。
…これはちょっとクサすぎてさすがに言えないけど。
「んー…なんでもいい」
大ちゃんがくれるならなんだって嬉しい。
一生の宝物にする。
【あー…じゃあ目ぇつむって】
「なんでよ?」
【いいから。マジにつむんなきゃ殺すぞ】
大ちゃんってたまに口が悪い。
言われた通り目を瞑る。
大ちゃんの笑顔が
まぶたの裏に浮かんだ。
【つむった?】
「しつこいなあ。つむったよ」
【絶対開けんなよ】
電話なんだから開けていたってわからないのに、
本当に閉じたのは─
まだ、純粋だったから。