“またね。”
「いないよ。できないし」

声が低くなる。

だって無神経だよ。

「そっか。まあ、菜摘ならすぐできるって」

『菜摘なら』ってなに?

ふざけないでよ。

乾いた喉にアイスココアを流し込む。



─『お願いだから、嫌いにならないで』─



ねぇ、菜摘は大ちゃんが好きだよ。

好きで好きでたまらないんだよ。



─たぶん

大ちゃんは菜摘の気持ちをわかってる。

じゅうぶん態度に出してるし、何より告白したばかりだし

気付いてないなら相当な鈍感だ。

わかってるのにこんなことを言うってことは―

わかってる。

菜摘だってそんなにバカじゃない。



「…大ちゃん」



それならやることはひとつだけ。

ごまかされるくらいなら、この想いを伝えればいい。

ちゃんと言葉にして

もう1度─



「あのさ─」

「わっ!やべぇ!」

言い掛けたところで、大ちゃんが突然叫んだ。

大ちゃんの目線を追うと、テーブルの上で赤いランプを点滅させながら震える携帯。

「え…なに?どしたの?」

「彼女からメールきた…」

『彼女』って…嘘でしょ?

それヤバイんじゃ…。

「マジやべー…」

「なんてきたの?」

ここで『彼女』という単語が出てくるなんて思いもしなくて

驚きのあまり、告白しようとしたことすら忘れ去った。
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