“またね。”
ねぇ、行かないで。

お願いだから、離れないでよ。



今泣いたら─

行かないでくれる?

頭を撫でてくれる?

抱き締めてくれる?

菜摘を見てくれる?



そう思わずにはいられない。

嫌な予感がするんだ。

もう会えなくなるような─



「送ってやれないけど、気を付けて帰んなね。またね」



行かないで。

行かないで。



「…うん。またね」



─『またね』─



それだけが救いだった。

その一言にすがりつくしかなかった。



『また会える』と

信じるしか、なかったのに。
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