“またね。”

おかしなこと

2月上旬。

気付けばもう受験まで1ヶ月を切っていて、忙しい毎日を過ごす。

どんなに忙しくたって、菜摘の中から大ちゃんがいなくなることは1日もない。

音信不通という最悪な終わりを迎えた菜摘がとった行動。

煙草をセブンスターに変えるって、そんなくだらないこと。

匂いがする度に傷は深くなるのに、本当にバカだ。

でも傷の中に、ほんの少しだけ安心があったんだ。



2人にも言えないままだった。

本格的に受験シーズンを迎え、中学3年間で1番忙しい時期。

そんな中、おかしなことが起こった。



「菜摘頑張ってる?」

授業中、隆志が菜摘のノートを覗く。

猛勉強を決心してからはもう見慣れた光景だ。

最近の授業はほぼ自習だから、隆志はこうして見にくる。

「うん。菜摘天才だかんね」

今まで生きてきた中で、勉強をしたのは初めてに近い。

ましてやこんなに勉強することなんて、この先ないと思う。

「なっつね、すごく賢いんだよ!教えたことスラスラ覚えるの」

元々、記憶力には自信がある菜摘。

学年トップクラスの伊織の教え方が上手なのも大きいけれど。

右側に座っている伊織が、菜摘の頭をポンポンと叩いた。



─…大ちゃんと重なって

少し、泣きそうになった。
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