“またね。”
“おかしなこと”が起こったのは、その日の昼休み。
友達何人かで給食を食べていると、誰かに名前を呼ばれた。
「なっちゃん、ちょっといい?」
振り向くと、隣のクラスの男の子が立っている。
「なに?菜摘忙しいんだけど」
ウィンナーを頬張りながら軽く流す。
だって最近は勉強ばっかりだから、唯一の楽しみといえば給食なんだもん。
「いいから。大事な話だから早くこい」
腕を引かれる。
『大事な話』って?
小さく頷き、心配そうにする友達に手を振った。
自意識過剰な菜摘は、いつもなら『これって告白?』とか思っちゃうけど
それはさすがにないだろうな。
昼休みに告白なんてありえないし、それに─
『大事な話』と言った時の表情。
明るい話じゃないことは、なんとなくわかってる。
菜摘の『嫌な予感』はよく当たる。
おとなしく後ろをついて行くと、教室と教室の間にあるロビーについた。
「まあ座れよ」
「お前が言うなよ」
よかった、けっこういつものノリだ。
少しホッとして、ベンチに腰掛けた。
そんなに悪い話じゃないのかな、なんて思ったけれど
2人を包む空気は、決して『いい』とは言えないものだった。