“またね。”

“おかしなこと”が起こったのは、その日の昼休み。

友達何人かで給食を食べていると、誰かに名前を呼ばれた。

「なっちゃん、ちょっといい?」

振り向くと、隣のクラスの男の子が立っている。

「なに?菜摘忙しいんだけど」

ウィンナーを頬張りながら軽く流す。

だって最近は勉強ばっかりだから、唯一の楽しみといえば給食なんだもん。

「いいから。大事な話だから早くこい」

腕を引かれる。

『大事な話』って?

小さく頷き、心配そうにする友達に手を振った。



自意識過剰な菜摘は、いつもなら『これって告白?』とか思っちゃうけど

それはさすがにないだろうな。

昼休みに告白なんてありえないし、それに─

『大事な話』と言った時の表情。

明るい話じゃないことは、なんとなくわかってる。

菜摘の『嫌な予感』はよく当たる。



おとなしく後ろをついて行くと、教室と教室の間にあるロビーについた。

「まあ座れよ」

「お前が言うなよ」

よかった、けっこういつものノリだ。

少しホッとして、ベンチに腰掛けた。



そんなに悪い話じゃないのかな、なんて思ったけれど

2人を包む空気は、決して『いい』とは言えないものだった。


< 138 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop