“またね。”
「アドレスとか聞けばよかったあ」
「んな余裕なかったじゃん」
…今ズキッて音しなかった?
的確に図星をつかれて、言い訳すら浮かばない。
「…まあ、そうとも言うよね」
些細な強がりも冷たい風によってかき消される。
坂道を下りきったところで赤信号に引っ掛かり、突然止まった勢いで隆志の背中に軽く頭突きをした。
「まあ、この高校入ればまた会えるって!だから頑張ろ」
「…気が向いたらね」
「またまたー」
やっぱり前向きな隆志に、照れ隠しは通用しないらしい。
信号の色がかわると、少し髪が揺れた。
「今度こそ忘れられたらいいな。そんで次こそ、まともな恋愛しなさい!」
『まともな恋愛しなさい』
隆志の口癖。
その一言だけで、たくさんの想いが伝わってくる。
心配してくれてありがとう。
「はあーい。菜摘頑張るね!」
でも『山岸』との再会に、時間はかからなかった。