“またね。”
すると今度は伊織が、菜摘にとっては信じ難いことを言った。

「あの子じゃないの?ミカって子」

─美香?

「え…なんで?」

「なんとなく。そういうことしそうじゃん、あの子」

どうして美香がそんなことするの?

そんなことする必要があるの?

遊ぶ約束だってしてるし、こんなことされる意味がわからない。

「…たぶん違うよ。だって喧嘩とかもしたことないし」

─『なっちゃんと近い奴って可能性高いじゃん』─

そうだと思う。

でも美香じゃない。

「そう?まあ、犯人見つかるといいね」



きっと─

『美香を信じてる』というより、

『美香には嫌われてない』という自信があった。

喧嘩なんてしたことないし、険悪なムードになったことすらない。

それにシンナーのことだって、謝ってきたのは美香の方だ。

こんなことをされる理由が思い当たらない。



―でも

なんだろう。

なんだか落ち着かなかった。

また嫌な予感がする。



その夜、メールがきた。

《サブアドだし、今日送ったらエラーだったって。ごめんな》

はあ、と大きくため息を吐いた。
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