“またね。”
「…うん。マジ調子こいてる」



静まり返った部屋に、美香の声が響く。

低く小さな声だったけれど、確かに聞こえた。

…せめて音楽がかかっていたら

聞き間違いかもしれないと思えるのに。

そんな、ほんの小さな希望すら打ち砕かれた。



「ウザイんだよね。マジ消えてほしい」



─は?

ウザイ?

消えてほしい?

「…な…に…?」

どうして?



これって夢じゃないの?

だって、あんなに楽しく遊んでたのに。



ふと思い出した。

数日前の、忘れかけていた話を。

「…もしかして、…菜摘のフリして出会い系に登録してたのも美香?」

「うん。なんで知ってんの?」

鼻で笑い、メンソールの煙草に手を伸ばす。

その姿を見て、頭が真っ白になった。



苦手なメンソールの香りが漂う。

その香りが、吐きそうなほど苦しい。
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