“またね。”
小さな奇跡
「だからさ、ほんっとにヤバかったんだって!」
「わかったってば。1週間もずっと同じこと言わないで!」
体験入学が終わってから早1週間。
菜摘は未だ興奮を抑え切れず、『山岸』の話を伊織に毎日繰り返していた。
「だってさ、ほんっとにヤバイくらい…」
「好みだったんでしょ?わかったってば」
伊織は毎日同じことを言い続ける菜摘にだいぶ呆れ気味だ。
まあ菜摘が逆の立場なら、3回目でうんざりすると思うけど。
「でもさ、かっこいいのは充分わかったけど、結局どうなったの?」
伊織には『かっこいい人がいた』としか話してない。
どう説明しようか迷いながらも口を開いた時、横から遮られた。
「固まったあげく顔真っ赤になっちゃって、話すことすらできなかったんだよ。ねー?」
割り込んできたのは隆志。
ニヤニヤしながら、菜摘の肩をポンポンと2回叩く。
…近くにいなかったはずなのに、どっから出てきたんだか。