“またね。”
「…なんであんたが泣くの?菜摘が何したのよ?」

無意識に声が低くなる。

菜摘は何もしてない。

美香を傷つけるようなことも

裏切るようなことも

絶対にしてない。



「…植木くんが…」



─植木くん?

どうして今、植木くんが出てくるの?

美香は俯いたまま、震える声で続けた。



「植木くん、元はあたしの友達だったのに…。あんたのこと連れてったら、急に仲良くなっちゃってさ。山岸くんのこと好きなくせに植木くんとも仲良くなったりして最低なんだよ!ただの男好きだろ!」



─好きな人以外の男とは仲良くしちゃダメ?

男と話したら男好き?

息を切らせて涙を流しながら、菜摘をきつく睨み付ける。

「そんなの美香に関係ない」

美香の勝手な言い分に、苛立ちを隠せない。

「こないだだって、あんたのせいで植木くんに怒られたんだから!!」

─『こないだ』って、いつ?

「お前が菜摘なんて呼んだからややこしくなったって…」

みんながシンナーを吸ってた日のこと?
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