“またね。”
彼女ができてから今までのこと。

寺田くんのこと、ガスやシンナーのこと、美香のこと─

隠していたことも全て。

起こったこと、話したこと、大ちゃんがくれた言葉。

音信不通になったこと。

それでも諦めきれず

まだ大好きだということ。



思い返していると、涙がとめどなく溢れてきて

いくら拭いたって意味がない。

「ティッシュ出した意味ないね」

伊織が笑って、菜摘の頭を撫でる。



大ちゃんとは全然違う、

少し頼りない手。

それなのに、すごく安心したのは

伊織の優しさが、

確かに伝わってきたから。



伊織は何も言わず、静かに聞いてくれていた。

そして一言、小さく

「頑張ったね」

器用な優しさにまた泣いて

『ずっと友達でいたいね』と、

ベタで幼い、けれど確かな約束を交わした。



そして、短い春休みが終わる。
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