“またね。”
ゆっくりと振り向く。

大好きな声の主は、

あの可愛い笑顔を菜摘に向けた。



「…大ちゃん」



観念して、下手くそに微笑む。

泣きそうになるのを必死に堪えた。

「お前、学食なんてくるんだ」

「…あ、うん。たまにね。大ちゃんは?」

「俺もたまに。偶然じゃん」

普通に話せてるかな。

避けていたのに、まさか大ちゃんから話し掛けてくれると思わなかった。

「そもそも、お前マジ受かってたんだ」

植木くんが立ち上がり、けなすような目で言う。

美香のことで気まずくなった時期もあったけれど、今はもう普通に接してくれていた。

「うっさいなーもう」

「女紹介しろよー」

「うるさいってばっ」

肩を思いっきり叩く。

「菜摘は頑張ったもんな。おめでと」

植木くんとは違って優しい駿くんが立ち上がり、菜摘の肩をポンと叩く。

「ありがと。駿くんは優しいなー」

嫌味ったらしく植木くんを見る。

こういうの久しぶりだから、なんだか楽しい。

これからの高校生活、楽しくなりそうだな─
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