“またね。”
「菜摘って彼氏いんの?」

さっそく切り出す亮介。

やっぱりこの話は定番だよね。

「いないよ。好きな人いたけど、諦めた」

シーンと静まり返った廊下に、『諦めた』という台詞が響く。

でもアドレス聞いてきたってことは、菜摘にほんの少しでも好意を持ってくれてるってことだと思うから正直に言った。

「マジかあ。でもなっち可愛いから大丈夫だって!」

…なんか、やっぱり軽いのかな?

『大丈夫』って何が大丈夫なんだろう。

「『なっち』って」

「ダメ?『なっち』って可愛くない?」

そんな呼び方する亮介の方が可愛いよ。

『なっち』なんて小さい頃お母さんに呼ばれてた以来だし、なんだか面白い。

「いいけどさ。ありがとね」

亮介の笑顔が眩しくて、つられて笑顔になる。

「それに彼氏いたら紹介なんか断ってるもん」

「そりゃラッキーだ。なっち一途なんだね」

『ラッキー』って…

ほんの少し、ドキッとした。

菜摘って本当に単純だ。

なんてストレートな人なんだろう。

「えと…亮介は彼女いないの?」

「彼女いたら他の女にアドレス聞いたりしないもん」

亮介が菜摘の口調を真似て言う。

「一途なんだね」

菜摘も真似して、2人で笑った。
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