“またね。”
出入口透明のドアが両側に動き、そこには学ランを着た人が3人。
真ん中の人…
「あ…あっ、あの人!」
「「えっ?」」
あの人…
そう、そこには『山岸』がいた。
“奇跡”が起きたと……本気で思った。
「嘘!山岸いたの!?」
伊織が菜摘に耳打ちをする。
菜摘は何度も何度も頷く。
隆志は『ありえない』とでも言いたそうに目を丸くしていた。
「なんかもう帰るっぽくない!?早く行かなきゃ!」
硬直している菜摘の背中を伊織が押す。
我に返り、一歩踏み出した。
「…ちょ…ちょっと待っててっ」
今しかチャンスはない。
話し掛けなきゃ。
ありえないと思っていた
それでも期待せずにはいられなかった、小さな奇跡。
このチャンスを逃すわけにはいかない。