“またね。”
教室に戻ろうとした菜摘を引き止めたのは亮介だった。

「…あれって前になっちが言ってた『好きな人』?」

急に腕を掴まれて、少し驚いた。



─ううん、違う。

『好きな人』って言葉に反応してるんだ。



「…なんで?」

「なんとなく。顔が明るかった気がして。かっこいいね、あの人」

ちょっと…

なんか嫌。

こういうの。

「…好き“だった”人だよ。諦めたって言ったじゃん。今は友達」

─嘘つき。

大ちゃんといる時、ドキドキしてるくせに。

会えたら嬉しいくせに。

「マジ?」

「ほんとだってば」

「よかった」

嘘をついたのは

亮介にも惹かれているから。



それから菜摘と麻衣子はいろんな部活に混ざり、2週間の猛特訓を開始した。

唯一の救いは、ある程度はいい運動神経と、中学時代バスケ部に所属していたことだけだった。



できる限りのことはしたい。

─…大ちゃんとの約束を守るためにも。
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