“またね。”
「…ミッキーは理緒にとられちゃった」

ちょっと…

嬉しすぎる。

隣で理緒が『えへ』なんてポーズを作っていても、そんなの気にならない。

そんな小さなこと

覚えててくれたんだ─



「みんな似合ってんのになー」

「うーるっさい!」

嫌味ったらしく言う植木くんのスネを、ローファーのかかとで蹴り上げる。

「いってーなテメー!」

「菜摘も似合ってるって。可愛いよ」

「ありがとー!」

「松ちゃん、こいつ甘やかすなって。調子のんだろ」

優しい駿くんに癒され、もう1度植木くんの肩を殴る。

降り掛かってきた拳を鮮やかに交わし、みんなでグラウンドに向かう。

玄関を出ようとした時

大ちゃんに、腕を掴まれた。



「え…なに?」

ビックリしちゃって、声が変。

「みんな行っちゃうよ?」

もう開会式が始まる時間だから、校内にはあまり人がいない。

無駄に広い玄関に、大ちゃんの声が響いた。



「髪、伸びたね」



微笑んで、菜摘の髪にそっと触れた。

─そのことも、覚えててくれたの?




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