“またね。”
─『俺、髪長い子が好きなんだ』─

あの日からずっと伸ばしていた。

半年が経った今、もう背中くらいになっている。

「似合う?頑張って伸ばしたんだよ」

毛先をつまみながらはしゃぐ菜摘に、大ちゃんは優しい笑顔を向けた。



ねぇ、大ちゃん。

菜摘、髪伸びたよ。

こんなに長くなったよ。

頑張って伸ばしてるんだよ。



ギャルっぽい子は苦手だって言うから、明るすぎない色に染めた。

サラサラのストレートが好きだって言うから、傷まないように努力してる。

元々ストレートの髪に、毎朝アイロンあててるんだよ。

菜摘、頑張ってるんだよ。



ねぇ、だからお願い。

菜摘を見てよ…─



開会式が終わり、校内は再びお祭り騒ぎになる。

「サボっちゃったね。ほら、早く行かなきゃ」

「…うん。時間あったら見に行くね」

手を振り、教室へと走った。



ねぇ…

菜摘を見てよ…。



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