“またね。”
気付いたら、3年生の男子はもうスタートラインに並んでいて

トップバッターの植木くんを見つけた時には、もう走り出していた。

理緒は最近できた彼氏のところに行っちゃったから、3人でそれを眺める。

「…植木くん、超速いじゃん」

由貴が呟いた一言に、麻衣子と2人で頷く。

ダントツ1位で駿くんにバトンを渡す姿を見て、つい『かっこいい』と思ってしまった。

駿くんももちろん速いけれど、菜摘の目は大ちゃんを探していた。



今日は雲一つない快晴で、まだ6月上旬なのにすごく暑い。

選手はみんなTシャツを肩までまくって、ジャージだって膝までまくっている。

それなのに、大ちゃんは

1人だけ上下ジャージで、植木くんと話しながら、相変わらずニコニコしている。

大ちゃんに緊張の色なんてない。

いつだって余裕綽々なんだ。



大ちゃんにバトンが渡った時、8組中3位。

『頑張って』と心の中で叫ぶ。

走り出した時、

アンカーを引き受けた理由も

余裕綽々な理由も

すぐにわかった。



─…もう『見とれた』としか言いようがない。
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