“またね。”

「全部聞いてたの?盗み聞きしないでよ」

赤いキャップのツバをつまむ。

横に被ってるところが妙に可愛い。

「ちげーよ、俺が先にいたんだもん。そしたらお前の声聞こえてきたから聞いてただけ」

そういうの、盗み聞きって言うんだってば。

本当に大ちゃんらしい。

「で、タカシって?」

「へ?…ああ、幼なじみだよ」

なんだって隆志のことを聞かれたのかわからない。

大ちゃんがこんなことを聞いてくるなんて。

「ふーん」

聞いてきたのは大ちゃんなのに、興味がなさそうに、菜摘の前髪でちょんまげを作った。

「元気なかったのってそいつらのせい?」

…ああ、なるほどね。

そういうことか。

元気なかったこと、覚えててくれたんだ。

「…違うよ」

「嘘つけよ。お前わかりやすいっつったじゃん。俺に嘘つくなって」

わかりやすいって─

わかっちゃうのは、大ちゃんだからだよ。



ねぇ、『俺に嘘つくな』ってどういう意味?

< 215 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop