“またね。”
「全部聞いてたの?盗み聞きしないでよ」
赤いキャップのツバをつまむ。
横に被ってるところが妙に可愛い。
「ちげーよ、俺が先にいたんだもん。そしたらお前の声聞こえてきたから聞いてただけ」
そういうの、盗み聞きって言うんだってば。
本当に大ちゃんらしい。
「で、タカシって?」
「へ?…ああ、幼なじみだよ」
なんだって隆志のことを聞かれたのかわからない。
大ちゃんがこんなことを聞いてくるなんて。
「ふーん」
聞いてきたのは大ちゃんなのに、興味がなさそうに、菜摘の前髪でちょんまげを作った。
「元気なかったのってそいつらのせい?」
…ああ、なるほどね。
そういうことか。
元気なかったこと、覚えててくれたんだ。
「…違うよ」
「嘘つけよ。お前わかりやすいっつったじゃん。俺に嘘つくなって」
わかりやすいって─
わかっちゃうのは、大ちゃんだからだよ。
ねぇ、『俺に嘘つくな』ってどういう意味?