“またね。”
「でももう解決したんだよね?」

前髪から手を離し、手ぐしで軽く整える。

校内は相変わらず騒がしいのに、自分の鼓動がよく聞こえる。

「うん。だからもうほんとに大丈夫」

「なんかあったらすぐ俺に言えよ」

だからさ─

そういうこと言わないでよ、バカ。

「…うん、ありがと」

きっと今、顔赤いだろうな。



「で、タカシと仲いいの?」

…あれ?

その話はもう終わったと思ったのに。

「うん、まあ。小学校からずっと一緒」

「あいつは?」

『あいつ』?

キーワードが『あいつ』だけじゃ、さすがに誰のことなのかわからない。

「『あいつ』って?」

「背ぇ高くて、ちょっとギャル男っぽい奴。仲いいじゃん」

やっぱり興味がなさそうに、ほどけている靴ひもを結ぶ。

…亮介のことかな。

「…ああ、友達だよ」

また卑怯なこと言う。

でも─

「…妬いてます?」

言いながら、大ちゃんの顔を覗き込む。

ヤキモチ妬いてくれてるの?
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