“またね。”
結局ライブは見損なって、ちょっと落ち込みながら後夜祭のために浴衣を着直す。

髪型もかえて、さっきまでとはまるで別人のような姿だ。

再び体育館へ戻る途中、亮介からメールがきた。

《受信:亮介
俺もう帰るわ。みんなで打ち上げ行く》

いつも絵文字たっぷりなのに、そっけないメール。

《送信:亮介
わかったよ。ごめんね》

そう送ると、メールは返ってこなかった。



わかってた。

亮介は引き止めてほしかったんだよね。

『帰らないで』って

『一緒に花火見よう』って

そう言ってほしかったんだよね。

わかってたのに引き止めなかった。



亮介は優しい。

人としてはすごく好きだと思う。

どうして好きになれないのか、自分でもわからなかった。

でもいつか―

…いつか、きっと。



―菜摘、好きなフリすらできてないじゃん。
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