“またね。”
後夜祭はお決まりのベストカップルから始まり、今日1番の盛り上がりを見せた。

外が暗くなった頃、トリにして最大の行事が始まる。

これまたお決まりの花火大会。

周りはカップルだらけで、学校なのに人目も気にせずキスしたり、手を繋いで寄り添ったり。

少し羨ましくて、寂しくなったけど

それでもやっぱり、『亮介に会いたい』とは思わなかった。



大歓声とともに打ち上げられた花火。

1人でボーッと眺めていたら、後ろから髪を軽く引かれた。

少し驚いたけど、振り向かなくたって誰だかはわかる。

「大ちゃん」

目が合うと、大ちゃんはニッコリ微笑んだ。

「なんで1人なの?」

「なんとなく」

「彼氏は?」

「さっき帰ったよ」

ちょっとドキドキする。

花火の音や歓声がすごくて、声をかき消されるから

自然と距離も近くなる。



この1ヶ月と少し、大ちゃんの口から『彼氏は?』って聞かれるの

いつになったら慣れるんだろう。

…いつになったら平気になるんだろう。
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