“またね。”
「てかさ、菜摘浴衣似合うじゃん。普通に着てた方がいいよ」

「ほんと!?」

『似合う』って言ってくれたの、初めてだ。

「…ありがとう。嬉しい」

「うん。素直でよろしい」

髪型が崩れないように、いつもより軽く頭を撫でてくれて─

少し、泣きそうになる。



「めんこいな」



あまり方言を使わない大ちゃんが、そう言って微笑んだ。

素直に喜んでもいいかな。

いいんだよね?

だって可愛いって言われたら、誰だって嬉しいはずだ。



…それに

今ここにいるのは、ふたりだけだから。

「…うん。ありがとう」



そのまま少しだけ、一緒に花火を見た。

亮介への罪悪感を押し殺しながら。



花火の音より─

自分の鼓動の方が、ずっと大きく聞こえた。
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