“またね。”
「もうすぐ2ヶ月だね」

「うん」

あと1週間で、付き合い始めてから2ヶ月が経とうとしていた。

いつも気をはりつめてるせいか、なんだかやたらと長かったような気がしてしまう。

「俺さ、これから毎月プレゼント渡すよ。そんで少しでも思い出増やそう?」

可愛いな。

亮介の太陽みたいな笑顔を見ていると、心が温まる気がする。

心の底から笑ってくれてることが、よく伝わってくるから。

…同時に罪悪感は大きくなる。

「うん。ありがと」

「…なっちさ、俺のこと好き?」

突然俯いた亮介は、メンソールの煙草に火をつけた。

菜摘が『ありがとう』って言ったら、いつもなら『可愛い』って言ってくれるところ。

「はっ?なんで急に…」

いつもと違うって

すぐに気付いた。



「…不安になった」



聞こえるか聞こえないかくらいの、本当に小さな声で

亮介は一言、そう呟いた。



「…亮介?」



ふと─

告白された時のことを思い出す。

『好きになれなかったら、振ってくれていいから』

まだ『それなりに』しか好きになれてないと思う。

じゃあどうして振らないんだろう。



「…好きだよ?」



自分でちゃんとわかってる。

亮介を失うのが怖いから。



「俺の方が好きだよ」



こんな菜摘をこんなに好きだと言ってくれる人を失うのが

怖くてしょうがなかった。

それなら嘘をつく方が、何倍も容易いことだったんだ。




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