“またね。”
まだ長い煙草を消すと、亮介が菜摘の肩を抱いた。

1度優しくキスをして

徐々に深いものへと変わっていく。

キスは何度もしているけれど、いつもと違う。

亮介に押し倒され、菜摘は拒まずに受け入れた。

付き合い始めて2ヶ月。

2人は初めて体を重ねた。



「大丈夫?」

「痛くない?」

亮介は何度もそう問い掛けて、気を使ってくれた。



「俺、超幸せ」

━菜摘も幸せだよ



「愛してるよ」

━菜摘も愛してるよ



「菜摘大好きだよ―」



一言も返してあげられない。

返さなくて済むように必死に感じてるフリをして、時折小さく『うん』と返した。

フリすらできないなら

好きになれないなら

もっと早く解放してあげればよかったのに。

亮介も菜摘も、お互いが離れられなくなる前に。

どこまでも追い詰めて、限界まで傷つけた。



菜摘は結局、いつまで経っても自分が一番大事だったんだ。

自分を守るためなら、平気で人を傷つけた。

中途半端なことを繰り返すのが嫌だったはずなのに

どんどん最低な人間になっていく。

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