“またね。”
彼氏と話し終えた理緒が迎えにきて、一緒に階段を下りる。

「なっつ、山岸さんと喋ってたでしょ」

「ん?うん」

「だから顔赤いのー?」

階段を踏み外しかけた。

なんとかバランスを保ち、手すりに掴んで立ち直す。

「なに言ってんのっ!菜摘顔赤い!?」

「うん、真っ赤」

頬に手を当てると本当に熱い。

─だって大ちゃん、顔近いんだもん。

「亮介には内緒にしてあげる」

語尾にハートをつけたような甘い声で理緒が言う。

にっこり笑って階段をリズミカルに下り、ロングの髪とスカートを揺らす。

本当に、亮介にバレたりしたら、何を言われるかわからない。

「理緒、ありが─」

「菜摘!」

階段を下り切ったところで、名前を呼ぶ声がした。



─ヤバイ。

今の話、聞かれてた─?

そこには、もう当然かのように亮介が立っていた。



「どこ行ってたんだよ。電話シカト?」

「なっつは理緒についてきてくれただけだよ!」

理緒が菜摘を庇う。

嬉しいけど、理緒を巻き込むわけにはいかない。


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