“またね。”
駿くんは『ふう』と息を吐き、今度は真剣な顔をした。

つられて菜摘も真顔になる。

「山岸さ、あいつ最近あんま学校きてねんだよ」

腕を組み、壁に体を預ける。

学校にきてない?

確かに最近ずっと会ってない。

見かけてすらいない。

「なんでこないの?なんか聞いてないの?」

バレてるならごまかしてもしょうがないから、素直に駿くんに詰め寄った。

「山岸が言うと思う?」

─そうだよね。

聞いたところで、大ちゃんが素直に言うわけがない。

大ちゃんってたまに早退はしてるけど、何度も学校を休むなんて珍しいから、なんだかすごく心配だ。

「菜摘も理由知らないんだ」

「うん…」

「まあ山岸に会ったら普通に接してやってよ。なんかあったんだと思うから」

予鈴が鳴ると、駿くんはそう言って苦く微笑んだ。

もっと詳しく聞きたかったけれど、次の授業の先生はうるさいから遅刻できないし

受験直前の駿くんに授業をサボらせるわけにはいかないから、『うん』と小さく頷いた。



─…大ちゃん、どうしたんだろう。

何かあったのかな。

気持ちが落ち着かないまま、音楽室へ向かった。
< 253 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop