“またね。”
12月中旬。

中学の頃から相変わらず学年一の遅刻魔を誇る菜摘は今日も遅刻。

ちゃんと1時間目から授業に出ることなんてほとんどない。

もちろん出席日数は足りるように計算してるけど。

元々低血圧で朝は天敵の菜摘が、冬のバス通学で学校に間に合うわけがない。

火曜日の1時間目は、すごく厳しい先生の授業。

授業中に寝ていたら欠席扱い。

1分でも遅れたら、職員室で『遅刻届け』をとってこなきゃ、教室にも入れてくれないような人。

今思えばそれが当たり前なんだけど、反抗期真っ最中の菜摘が素直に従うわけもなく、ちょうど1時間目が終わる頃に着くバスに乗った。



この時間帯のバスは好き。

あまり人が乗っていないし、下りてからも、うっとうしい高校生の集団がいないから。

足跡をつけながら、1人で優雅に雪道を歩く。

信号待ちなんて面倒だから、地下歩道の階段をローファーで音を立てながら下りた。



「菜摘?」



後ろから聞こえた、振り向かなくてもわかる、大好きな声。

「大ちゃん」

久しぶりに見た大ちゃんの姿。



学校きたんだ─



嬉しさと恥ずかしさが交差して、心臓は激しく音を立てていた。


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