“またね。”
「なっち、今日泊まってきなよ」

「へ?」

7時を回った頃、亮介がビールを片手に言った。

「いいよ。じゃあ1回帰るね」

「なんで?」

「着替えたいし、何も持ってきてないしさ」

ソファーから立ち上がり、鞄を手に取る。

「9時くらいにまたくるね。じゃあ─」

「なんで?」

さっきよりもひときわ低い、亮介の声。

同時に腕を掴まれた。



─…亮介、怒ってる?



「え…だから、着替えとかさ」

「いいだろそんなの。このまま泊まれよ」

─目が笑っていない。

心臓がドクンと鳴って、怖い、と認めるしかなかった。

酔いが回ってるせいか、虚ろな目が怖い。

「な?」

もう着替えなんてどうでもいい。

ただ、一刻も早くこの場から

亮介から離れたい。

「でも─」

「うるせぇな!」

怒鳴り声と同時に、力強く腕を引かれた。

下にあったはずの亮介の顔が上にくる。



「ちょっと黙ってろよ」
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