“またね。”
なんとか落ち着こうと煙草に火をつける。

ちょうど吸い終わる頃、黒のエスティマが視界に入り込んできた。

あれは…

植木くんの車?

誰かが車から下り、菜摘の元へ駆け寄る。



「菜摘!」



─くるの早すぎだよ。

まだ5分しか経ってない。

公園なんて他にもたくさんあるじゃない。

それにこの公園、車は立ち入り禁止なのに。



「大ちゃん…」



息を切らし、柱に手を掛ける。

急いできてくれたんだ─

「…泣いてんの?」

菜摘の前にしゃがみ、そっと頬に触れた手は

とても冷たいのに、なぜか暖まる。

「…泣いてない」

泣いてるよ。

こんなにも涙が溢れてる。

「泣き虫。大丈夫だから、もう泣かなくていいよ」

ついさっきまで、あんなにも孤独を感じていたのに

気が付けば、大ちゃんの腕の中。

「寒かったろ」

「…うん…」

─…そうだ。

人の温もりはこんなにも暖かい。

こんな温かい気持ち、もう忘れていたかもしれない。



心から暖まるような

世界一の幸せ者になれちゃうような

そんな気持ち。
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