“またね。”
「お前さ、もう別れろよ」

車の中。

もう少しで家に着く頃、植木くんが言った。

助手席に座っていた駿くんも、菜摘も、驚いて植木くんを見る。

大ちゃんは流れる景色を眺めながら、静かに煙草を吸っていた。

手は繋がれたまま。

「…なんで?」

「亮介だろ。原因」

何も言えない。

どうしてわかったの?

─って、そんなの誰でもわかるよね…。

「何されたかしんねぇけどな、いい加減にしろよ。サイトで散々叩かれて、亮介に好き放題やらしてよ。しまいには泣かされて、そんなん楽しいか?」

なめらかにハンドルを左に切り、車を止める。

静かな車内にエンジン音だけが響く。

「『自分が我慢してればいい』とか言うなよ。言ったらぶっ殺す」

そんなこと思ってない。

思えるわけがない。

悪いのは他の誰でもなく菜摘だ。

「植木はさ、菜摘のこと心配して言ってるんだよ。こいつなりに大切にしてるんだって」

「そんなんじゃねぇから」

駿くんが言ったこと、ちゃんとわかってる。

植木くんって口は悪いけど、本当はすごく優しいこと。

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