“またね。”
学校帰り、向かったのは亮介の家。

怖くはなかった。

レイプされたわけじゃない、彼氏に無理矢理されただけ。

暴力なんて怖くない。

むしろもう、殴られてもよかった。

別れることしか考えられなかった。

今までずっと繋いできたのに

どこまでも勝手な女だ。



薄暗い部屋。

電気もつけず、亮介はベッドに座る。

手を強引に引かれて隣に座った。

「菜摘…」

近づいてくる顔。



「…何やってんだよ」



言い訳も通じないくらい、あからさまに交わしてしまった。

でもしたくない。

初めて亮介を拒んだ。

「…ごめん。無理」

「なんで?いいじゃん。しようよ」

菜摘を強引に押し倒し、上に覆いかぶさる。



─…嫌。

─やめて。



「やだって!触んなよ!」



──パチン──



一瞬、時間が止まったかと思った。



亮介のこと

殴っちゃった…。



「…意味わかんね。なんで殴られなきゃなんねぇの?ふざけんなよ」

亮介は真っ赤に腫れた左頬に手を当てながら、部屋から出て行った。



呆然としながら、ふとテーブルに目を向ける。

「携帯…」

視界に入り込んできたのは亮介の携帯。

家に向かってる時からずっと光りっぱなしの携帯。

どうしてだろう。

前々から疑ってたとかじゃないのに、ためらうこともなく中を見てしまった。



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