“またね。”
外へ出ると、少し離れたところに山岸さんの姿。
「…ほんとにいるじゃん」
ふたりは目を点にして声を重ねる。
「だから嘘じゃないってばっ。行ってくるから!」
呆然とするふたりと別れ、山岸さんの元へ駆け寄った。
「寒かったですか?ごめんなさい」
白い息を吐き、両ポケットに手を入れて立つ山岸さん。
山岸さんは、学ランの中にシャツしか着ていないみたいだ。
もう10月に入っていて、ここは雪国。
それにもう辺りは真っ暗。
そんな薄着じゃ耐え難い気温だ。
「全然待ってないけど、超寒い!菜摘、チャリある?どっか行こ」
菜摘のカーディガンの袖を掴み、足をバタバタさせる。
可愛いな。
それに、2人乗りするってことだよね?
そんなの嬉しい。
「ありますよ。山岸さんがこいでくださいね」
「いいよ」
「じゃあチャリ持ってきますね」
出入口の横にある自転車置き場へと足を速めた。
自然と足取りが軽くなる。
菜摘って思ってた以上にバカなのかもしれない。
たかが2ケツがこんなに嬉しいなんて。
なんでだろう、全部がわからなかった。
すごく不思議な気持ちだったんだ。