“またね。”
自分勝手さに俯くと、駿くんは菜摘の頭に手を置いた。

「あのさ。そこらにカップルなんて山程いるけど、本当に好き同士で付き合ってる奴らってどれくらいいんのかな」

─そんなこと、考えたこともない。

とても優しい目をして、駿くんは続けた。

「それぞれ色んな経験して、色んな想いがあってさ」

駿くんは背もたれに体を預け、真っ直ぐ前を見る。

「言い方悪いかもしんねぇけど。本当に…世界で1番好きな奴と付き合えてる奴なんて、そんなにいないんじゃないかな」



俺もこれから先、彼女ができたとしても

その子を忘れたかって聞かれたら、絶対忘れられないと思う。

でもきっと、それは当たり前のことなんだよな。



駿くんの言いたいことが、なんとなくわかった。

「菜摘もそうだったんじゃない?」

ああ─

駿くんは知ってるんだね。

菜摘が大ちゃんを好きなこと。

それなのに、亮介と付き合ってたこと。

1番欲しかった言葉を、まさか駿くんに言われるとは思わなかった。
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