“またね。”

「あんま遅くなっちゃヤバイし、菜摘のこと送るがてらに話そうよ。家どこらへん?」

走り始めて少し経った頃、大輔が言った。

「別に遅くなってもいいよ?」

「そういうわけにいかないだろ」

話したいことたくさんあるのに。

次いつ会えるかわからないのに。



お互いの住所を教え合うと全くの逆方向だった。

時刻は19時で、ここは不便な田舎。

大輔は帰りが徒歩になるから、通りかかった公園に入った。

ふたりの家の中間くらいにあるし、ちょうどいい。



1番奥のベンチに腰掛ける。

このベンチにだけ屋根がついていて、それだけで少し暖かい。

「この公園初めてだ。大輔の高校から近いよね」

「うん。昼休みとかよく煙草吸いにくるんだよね」

言いながら、内ポケットから煙草を取り出す。

「見つかったら停学くらうじゃん」

「見つかんないから停学くらわないよ」

すぐに火をつけて、煙を吐く横顔が綺麗。



この香りは

セブンスター。


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