“またね。”
「てかさ、言いそびれてたんだけど。前に俺、菜摘のことシカトした時あったじゃん」

大ちゃんが気まずそうに頭をかく。

菜摘が高校に入る前の時だろうか。

たぶんそれしかない。

「あん時さ、彼女に女のメモリ全部消されたんだよ。んで毎日携帯チェックされてて」

そんなこと、もう気にしてないのに。

大ちゃんは気にしてたの?

「カラオケの話で菜摘に会いたくないって言ったのは、次会ったらその女ヤキ入れるとか言われたから」

そうだったんだ…。

─『守るから、安心して』─

大ちゃんは菜摘を守ってくれたんだよね?

「ずっと謝りたかったんだ。ほんとにごめんね」

「謝んなくていいよ。今は普通にしてくれてるんだからいいじゃん?」

誰よりも無関心な大ちゃんが、菜摘を守ってくれた。

それだけで充分だよ。

「ありがと。お前やっぱいい奴だわ!」

そう言って、菜摘の頭をくしゃくしゃと撫でた。

無邪気で、可愛くて優しくて、菜摘の大好きな笑顔。



嬉しくて

寂しくて

切なくて

苦くて



菜摘は、大ちゃんが好き。

大好きなんだ。

大ちゃんしか見えない。
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