“またね。”

「大輔って彼女いないの?」

積極的な菜摘はさっそく切り出した。

思い立ったらすぐ行動、好きになったら一直線。

いくら緊張しているとはいえ、それが菜摘。

「今はいないよ。彼女いない歴4ヶ月」

心の中でガッツポーズをして、顔が緩みそうになるのを必死で堪えた。

「菜摘は?」

「菜摘もいないよ」

答えて、少し考えた。

……どれくらいだっけ。



ふと、今までを振り返った。

菜摘の恋はいつだって中途半端だ。

好きでもない人と付き合って、すぐに別れて。

『付き合った』と言えるのかすら危ういほどに期間は短い。



…本気の恋も、1度だけある。

手すら繋げなかったのに、1度だけキスをした。

初めての恋

初めての嫉妬

初めてのキス。

子供なりに、真剣な恋だった。

淡い初恋、ってやつだと思う。



『付き合う』ってよくわからない。

後悔ばかりが残る。



『付き合おう』って口約束して

出掛けたら手を繋いで

ふたりきりになればキスして

相手のスイッチが入れば……。



くだらないと思う。

そういう行為じゃない。

そんなものに依存してる自分がいちばんくだらなくて、何より情けないと思う。


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