“またね。”
いつまでもはしゃぐ菜摘。

目が合うと、優しく微笑んでくれた。

その笑顔に鼓動が早まる。

すると大ちゃんは突然黙り込んだ。

「大ちゃん、どしたの?」

菜摘が話し掛けても無反応。

腕を組みながら俯く大ちゃん。

「大ちゃん、帰りたいの?帰る?」

無視されるのもじれったいのも大嫌いだから、いつもならイライラするところだけど

ただただ不安だった。



帰りたい?

つまらない?

菜摘、何かした?



不安をそのまま表に出し、少し早口になってしまう。

「いや、そうじゃないよ。あのさ…」

少し焦りながら言う。

『そうじゃない』という台詞に、不安は少しだけなくなった。

「うん。なに?」

もう1度聞くと、大ちゃんは顔を上げて

微笑みながら菜摘の髪に触れる。



次に聞いた台詞は─

菜摘の不安とは正反対の言葉だった。







「俺、菜摘好きだわ」
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