“またね。”
「え…嘘だあ。何言ってんの?大ちゃん彼女いるじゃん」

─そうだよ。

大ちゃん、彼女いるじゃん。



─『気になる子がいるって』─

─『山岸は菜摘が好きなんだと思ってた』─



─そんなの嘘。

『思ってた』って、それはあくまで駿くんの想像だ。

だって大ちゃんは、この2年間、1度だって振り向いてくれたことはなかった。



でも─

嘘でも嬉しかった。

ずっと言われたかった言葉。



─『愛してる』─



ずっと─

大ちゃんから、聞きたかった言葉。



「嘘じゃないって!今日だって俺、菜摘から電話きてすっ飛んできたじゃん?」

「そうだけど…」

菜摘が泣けば、大ちゃんはいつだって飛んできてくれた。

包み込んで、笑って

不安や苦しみを吹き飛ばしてくれた。



─『あいつが唯一必死になんのは、菜摘のことだけ』─

─『あいつが唯一人間らしくなんのは、お前といる時だけなんだよ』─



でも彼女いるじゃん…。



「彼女は…言い訳がましいかもしんないけど、ずっと前から別れようと思ってたから。菜摘が好きだよ」



本当に─?

嘘じゃないよね?

大ちゃんは、あまり自分のことを話してくれないけど─

こんな嘘はつけない人だから。

菜摘はずっと大ちゃんを見てきたから知ってるんだ。



嬉しいよ…。

目頭が熱くなり、下を向いた。
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