“またね。”

「…あー…ごめん」

せっかく一緒にいるのに、何考えてるんだろう。

黙り込んでしまった菜摘の頭を、大輔がそっと撫でた。



…大きな手。

目が合うと大輔は優しく微笑んだ。

「そうだ。菜摘、おいで」

ニッコリ笑って、両手を広げる。

『おいで』って?

「俺が癒してやるよ。菜摘ちっこいし、俺の腕ん中にすっぽりおさまりそうじゃん」

「ちっこいは余計だよ。…てかタラシですか!?」

「タラシじゃねぇよ!菜摘、なんか寂しそうだから」



……寂しそう、なんて

初めて言われた。



「おいで。ね?」

腕を掴まれ、抱き寄せられる。

本当にすっぽりおさまってしまった。

「ほら、やっぱおさまった。菜摘はちっちぇーな」

「…やっぱタラシだ」

こんなの初めてじゃないはずなのに、たかがこれくらいですごくドキドキする。

菜摘どうしちゃったんだろう。

頭おかしくなったんだ、きっと。



強く抱き締められた瞬間、恥ずかしさなんて消えて

ずっと忘れられなかった元彼の存在さえも、嘘みたいにどこかへ行ってしまった。



大輔の体温に、ただただ安心して

泣きたくなった。



……好き。

この人が、好きだ。


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