“またね。”
ホテルに着くと、適当に綺麗そうな部屋を選ぶ。

大ちゃんが菜摘の手を引き、部屋へと階段を登った。



「菜摘ってラブホ初めて?」

なんだか少し重たい空気の中、大ちゃんが口を開いた。

「ううん」

亮介と付き合っていた頃、好奇心できたことがある。

「そっかあ」

大ちゃんは2人用の小さなオレンジ色のソファーに腰掛け、煙草をくわえながらテレビを付けた。

少し戸惑いながら菜摘も隣に座る。

その時テレビに映ったのは、裸で絡み合う男女の姿。

「…ちょ…ヤバイ。これはダメだな」

慌ててテレビを消す大ちゃんが、なんだか可愛く感じる。

ベタな展開だなあ、なんて思った。

「ここどこだかわかってる?ラブホなんだからさ、AV入んのは当たり前でしょうよ」

冷静に突っ込むと、大ちゃんは少しだけ顔を赤くした。

なんかさっきと立場が逆だ。

「…うわーやべぇ!緊張してきた!!」

大ちゃんが突然頭を抱えながら叫ぶ。

「はっ?自分がこんなとこ誘ったんじゃん!」

「そうだけど…お前ととか緊張すんだよ!」

…じゃあこんなとこ誘わなければいいのに。

本当によくわからない人。

でも大ちゃんが取り乱す姿を見たのは初めてだから

ちょっと面白くて、嬉しい。
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