“またね。”
大ちゃんが菜摘の前髪でちょんまげを作る。

大ちゃん、これ好きなんだよね。

「なんかお前相手だと雰囲気出ねぇな」

『緊張する』って言ってたくせに。

好きな人にこんなこと言われるって、けっこう落ち込む。

さっきまでの雰囲気、台無しじゃん。

「失礼な。言っとくけどさ、菜摘けっこう色気あるよ?」

「自分で言うなよ!」

「だってほんとだもん」

「見してみ」

「やだよバカ。えっち」

自然と笑顔になる。

大ちゃんが真剣な顔をしたから、菜摘も少し緊張する。

「菜摘、チューしていい?」

真剣な顔をしたと思ったら、また可愛く微笑む大ちゃん。

本当に可愛いんだから。

それに、そんなの今さらな質問。

断るわけがないのに。

「うん」

軽く唇を合わせた。

この短い瞬間が最高に幸せ。

「お前やっぱ可愛いわ!…エッチする?」

…大ちゃん。

こんなところまできておいて、普通そんなこと聞かないよ。



でもやっぱり可愛くて、心が満たされる。

完全体でいられるような、そんな感覚。

菜摘の居場所は大ちゃんの隣。

本当にそう思った。

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