“またね。”
緩めた手は、菜摘の頬へと移動する。
何度…何度触れられても、『慣れる』なんて言葉はない。
大ちゃんといる時は、菜摘の胸は静まることを知らない。
2年前から、それはずっと変わらない。
「だってさ、先に聞かなきゃ拒まれそうだもん。落ち込むじゃん」
拒まなきゃいけないなんて、そんなのわかってる。
でもするわけないじゃない。
「拒んだりしないよ?」
わかっていたからついてきた。
大ちゃんとそうなることを、望んでいたんだから。
初めて思ったの。
『抱いてほしい』って。
「ほんとにいいの?」
大ちゃんと繋がりたい。
それしか考えられない。
「うん」
大ちゃんの不安そうな表情を見たのも初めてで
とても愛しく思った。
そして─
2人は、ゆっくりと時間をかけて繋がった。
虚しい行為かもしれない。
これは『浮気』でしかないんだから。
いけないことだって、ちゃんとわかってる。
でも─
大ちゃんの、温かい手。
名前を呼ぶ優しい声。
切ない表情。
全てが愛しくて、『恋人』のような錯覚を覚えた。
大ちゃんの腕の中は『幸せ』しかなかった。
彼女への罪悪感や、罪の意識なんて
これっぽっちもなかった。
これが罪だと言うのなら
例え天罰がくだったって構わない。
大ちゃんといられるなら、なんだって耐えられるから
…傍にいさせてください。