“またね。”

緩めた手は、菜摘の頬へと移動する。

何度…何度触れられても、『慣れる』なんて言葉はない。

大ちゃんといる時は、菜摘の胸は静まることを知らない。

2年前から、それはずっと変わらない。

「だってさ、先に聞かなきゃ拒まれそうだもん。落ち込むじゃん」

拒まなきゃいけないなんて、そんなのわかってる。

でもするわけないじゃない。

「拒んだりしないよ?」

わかっていたからついてきた。

大ちゃんとそうなることを、望んでいたんだから。

初めて思ったの。

『抱いてほしい』って。

「ほんとにいいの?」

大ちゃんと繋がりたい。

それしか考えられない。

「うん」

大ちゃんの不安そうな表情を見たのも初めてで

とても愛しく思った。



そして─

2人は、ゆっくりと時間をかけて繋がった。



虚しい行為かもしれない。

これは『浮気』でしかないんだから。

いけないことだって、ちゃんとわかってる。



でも─

大ちゃんの、温かい手。

名前を呼ぶ優しい声。

切ない表情。

全てが愛しくて、『恋人』のような錯覚を覚えた。

大ちゃんの腕の中は『幸せ』しかなかった。

彼女への罪悪感や、罪の意識なんて

これっぽっちもなかった。



これが罪だと言うのなら

例え天罰がくだったって構わない。

大ちゃんといられるなら、なんだって耐えられるから

…傍にいさせてください。
< 327 / 407 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop