“またね。”
1週間ほどが経ち、ある日の休日。

いつもの4人で理緒の家にいた。

もちろん大ちゃんとは、あの日以来、一切連絡をとっていない。

平気なわけがなく、毎日携帯が鳴る度に期待して震えて―

表示されない名前にひどく落ち込んでいた。



夜10時頃、菜摘の携帯が鳴った。



─…夢だと思った。

あの着信音。

もう鳴ることはないはずの、解除できなかったあの曲。

それでも期待せずにはいられなかった―

「なっつ、どしたの?出ないの?」

麻衣子が菜摘の顔を覗き込む。

「ううん…」



サブ画面にスクロールされているのは

『大ちゃん』の文字。



なんだろう─?

恐る恐るメールを開く。



《受信:大ちゃん
元気?》

何事もなかったかのようなメール。

《送信:大ちゃん
元気だよ。急にどしたの?》

怒りたいのに何も言えない。

ただ、少し泣きそうになった。

《受信:大ちゃん
どしたのって、俺またねって言ったじゃん?》

意味わかんないよ…。

もう会えないって言ったじゃん。

もう終わりなんでしょ?

恋愛ごっこなんてしたくないんだってば。

菜摘のこと振り回さないでよ。

期待させないでよ…。




矛盾してるってわかってる。

情けないのもわかってる。

でも、毎日待ってたから

やっぱり嬉しかった。

メールがきて、目に涙が滲むくらい嬉しいんだ。

菜摘はすぐに電話をかけた。



【…もしもし?どした?】

「こっちの台詞。どしたの?」

大ちゃんの様子が少しおかしい。

いつも聞いていた、大好きな声。

いつも見ていた、大好きな人。

少しの変化だってすぐにわかる。
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